水素・アンモニア・電力(バッテリー)などを活用する「ゼロエミッション船等」の国内生産体制の構築を支援する、「令和7年度(補正予算)ゼロエミッション船等の建造促進事業」の二次公募が開始されています。
今回の制度は、ゼロエミッション船そのものの購入費を補助する制度ではなく、主としてゼロエミッション船に必要となるエンジン、燃料タンク、燃料供給システム、電気推進・燃料電池システム等の生産設備や、船舶への搭載(艤装)に必要な設備等の整備を支援するものです。
補助率は大企業が3分の1以内、中小企業等が2分の1以内で、補助上限額は設定されていません。
造船事業者や舶用機器メーカーなど、今後の海事分野における脱炭素化・GXへの対応を検討している企業にとって、非常に重要な支援制度といえます。
申請受付期限は令和8年10月9日(金)正午までです。
申請にはjGrantsを利用するため、gBizIDプライムを取得していない場合は早めの準備をおすすめします。
ゼロエミッション船等の建造促進事業とは
本事業は、水素、アンモニア、LNG、メタノール及び電力(バッテリー)を推進エネルギー源とする船舶の国内生産体制を構築し、市場導入を促進することで、CO2排出量の削減と我が国の産業競争力強化・経済成長を図ることを目的としています。
特に今回の公募では、ゼロエミッション船等の建造に必要となる関連舶用機器等の生産設備や、これらを船舶に搭載するための艤装プラットフォーム等の整備が支援対象となっています。
補助対象となる主な設備
公募要領では、主に次のような設備が対象として示されています。
| 区分 | 主な対象設備 |
|---|---|
| 関連舶用機器等の生産設備 | エンジンの生産設備 |
| 関連舶用機器等の生産設備 | 燃料タンクの生産設備 |
| 関連舶用機器等の生産設備 | 燃料供給システムの生産設備 |
| 関連舶用機器等の生産設備 | 電気推進・燃料電池システムの生産設備 |
| 関連舶用機器等の生産設備 | 配管・ポンプ等のゼロエミッション船関連設備の生産設備 |
| 艤装設備 | エンジン、燃料タンク、燃料供給システム等を船舶へ搭載するための設備(艤装プラットフォーム等) |
設備機械装置の購入(改造等を含む。)が必須とされており、設備機械装置の購入を伴わない事業は補助対象外となります。
また、補助対象となる事業は、原則として日本標準産業分類に掲げる製造業の用に供される工場において実施される必要があります。
補助対象となる事業者
対象となるのは、公募要領に定められた各種要件を満たす大企業・中小企業等の法人です。
事業終了後も、取得した建物・設備等について責任をもって管理・運営できることが求められます。
また、国内において登記された法人であり、国内に事業実施場所を有していること、本事業を適切に実施する組織・人員・経営基盤等を有していることなども必要です。
中小企業の基準
| 業種 | 資本金・出資額 | 従業員数 |
|---|---|---|
| 製造業その他 | 3億円以下 | 300人以下 |
| 卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
| 小売業 | 5,000万円以下 | 50人以下 |
| サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
なお、大企業との資本関係等によっては、中小企業の規模に該当していても「大企業」として取り扱われる場合がありますので注意が必要です。
主な補助要件
本事業では、単に設備を導入するだけではなく、企業全体としてのGX・カーボンニュートラルへの取組が重視されています。
- ゼロエミッション船等に必要な関連舶用機器等の生産設備又は艤装設備等を整備すること
- 設備機械装置の購入又は改造等を伴うこと
- 原則として採択公表日前に投資決定を対外発表していないこと
- 2050年より前倒しした会社全体の野心的なカーボンニュートラル目標を設定すること
- 生産能力・建造隻数・市場シェア等について野心的な目標を設定すること
- 原則として事業終了後5年間以上、対象となる船舶・機器等の生産を継続すること
- 温室効果ガス排出削減に向けた所定の取組を実施すること
また、造船法第11条に基づく事業基盤強化計画の認定を受けていない事業者については、原則として交付決定後6か月以内に認定を受ける必要があります。
補助率・補助上限額
| 事業者区分 | 補助率 | 補助上限額 |
|---|---|---|
| 大企業 | 1/3以内 | なし |
| 中小企業等 | 1/2以内 |
本補助金では補助上限額が設定されていない点が大きな特徴です。
ただし、審査の結果、申請した補助希望額を下回る金額で採択される可能性があります。
主な補助対象経費
公募要領では、主な補助対象経費として次のような区分が定められています。
| 区分 | 主な内容 |
|---|---|
| 工事費 | 本工事費、付帯工事費、機械器具費、測量・試験費等 |
| 建物費 | 補助事業専用設備の運転に不可欠と認められる建物の取得費 |
| 設備費 | 設備・機器・システムの購入、運搬、調整、据付け等 |
| 業務費 | 調査、設計、製作、試験、検証等に必要な経費 |
| 事務費 | 補助事業を行うために直接必要となる所定の事務経費 |
補助対象経費は、事業を遂行するために真に必要かつ適切な経費であることが求められます。
補助対象外となる主な経費
次のような経費は原則として補助対象外とされています。
- 交付決定前に発注・購入・契約等を行った経費(事前着手が認められた場合を除く)
- 既存建物・設備機械装置の撤去費
- 既存設備機械装置の移設費
- 事務所等の家賃、保証金、敷金、仲介手数料、光熱水費
- 電話代、インターネット利用料金等
- 一般的な文房具・新聞・雑誌・団体会費等
- 自動車等の車両購入費・修理費・車検費用
- 振込手数料、公租公課、各種保険料等
- 借入金の利息、遅延損害金
- 汎用性があり目的外使用が可能なパソコン・プリンター等
- 価格設定の適正性が明確でない中古品
応募段階で補助対象として計上していても、採択後の交付申請時の精査によって補助対象外と判断される場合がありますので、経費区分については慎重な確認が必要です。
二次公募の申請期間
| 公募開始 | 令和8年8月21日(金) |
|---|---|
| 申請締切 | 令和8年10月9日(金)正午 |
| 採択審査 | 令和8年11月頃 |
| 採択通知・公表 | 令和8年12月以降(予定) |
応募件数等によって採択通知時期が前後する場合があります。
申請方法
申請は、国の電子申請システム「jGrants(Jグランツ)」から行います。
jGrantsを利用するにはgBizIDプライムアカウントが必要です。公募要領では、gBizIDプライムの取得に2~3週間を要する場合があるとされています。
まだ取得していない事業者は、公募締切直前になって慌てることがないよう、早めに手続きを進めておくことが重要です。
主な申請書類
本補助金では、一般的な設備補助金と比較して、かなり詳細な事業計画の作成が求められます。
- ゼロエミッション船等の建造促進事業の応募について
- 間接補助事業概要説明書
- 間接補助事業の実施計画
- 事業戦略・事業計画
- 排出削減への貢献
- 「民間企業のみでは投資判断が真に困難な事業」への適格性
- 経営層のコミット
- 経費明細
- 収支計画
- GXリーグへの加入状況又は温室効果ガス排出削減のための取組
- 人材確保に向けた取組
- ワーク・ライフ・バランス等の推進に向けた取組状況
- 技術流出を防止するための具体的な措置
- 暴力団排除に関する誓約事項・役員等一覧
- その他必要な確認書類・補足資料
申請内容によっては追加資料の提出を求められる場合もあります。
審査で重視されるポイント
採択審査では、提出書類に基づく書面審査に加え、WEB会議による面接審査が予定されています。
面接審査には、提案企業等の代表権を有する者の参加が求められます。
① 基本的事項
- 補助事業の目的・要件に合致しているか
- 申請事業者としての適格性があるか
- 十分な実施体制が整っているか
- 経営層が事業に強くコミットしているか
- 財務の健全性が確保されているか
- 設備内容・規模・投資額・スケジュール等に実現性があるか
② 産業競争力強化への貢献
- 事業終了後の自立化までを見据えた成長計画
- 地域雇用や国内サプライチェーンへの経済波及効果
- 具体的な市場・顧客を想定したビジネスモデル
- 市場獲得に向けた戦略
- ビジネスモデルの独自性・新規性・優位性
- ゼロエミッション船等の生産能力に関する野心的な目標
③ CO2排出削減への貢献
- 設備導入によってどの程度のCO2削減効果が期待できるか
- 2030年度におけるScope1・Scope2の排出削減目標
- より野心的な温室効果ガス削減目標の設定
④ 補助金がなければ投資判断が困難であるか
本制度では、「補助金がなくても企業単独で普通に実施できる投資」であるかどうかも重要な審査ポイントです。
補助金がない場合のIRR(内部利益率)や投資回収期間、技術の先進性などから、民間企業だけでは経済的・技術的に投資判断が難しい事業であることを説明する必要があります。
⑤ 人材確保への取組
賃上げ等を含めた人材確保への取組も審査対象です。さらに、一定以上の賃上げ計画やワーク・ライフ・バランス等に関する取組については、加点対象となる場合があります。
事業実施期間
採択後は速やかに交付申請を行う必要があり、交付申請の締切は令和9年1月22日です。
交付決定後、設備・建物等の取得に係る発注等を行い、遅くとも令和12年1月31日までに事業を終了する必要があります。
ここでいう事業終了とは、原則として建物・設備等の取得が完了するだけでなく、対象経費の支払いまで全て完了した状態をいいます。
交付決定前の発注には注意|事前着手制度もあります
補助金では、原則として交付決定前に行った発注・契約・支出は補助対象になりません。
発注先に対して口頭・書面で内示した場合も「発注」と判断されるため注意が必要です。
ただし、本事業では、必要性・緊急性が認められる場合に「事前着手届出」を行う制度が設けられています。
事前着手の受付期間は公募開始日から令和8年10月9日(金)正午までです。
もっとも、事前着手届が受理されたからといって、補助金の採択や交付決定が保証されるわけではありません。また、受理通知に記載された「事前着手開始日として認める日」より前の経費は対象となりません。
リース会社を利用する場合
設備取得にリース会社を利用する場合には、原則として設備の設置事業者とリース会社による共同申請となります。
補助対象となるのは、リース会社が購入した設備機械装置であり、リース料に含まれる手数料・保険料等は対象となりません。
また、補助金相当額がリース料から減額されていることを確認できる資料等が必要となります。
申請を検討する際のポイント
本補助金は、単なる設備購入の申請ではありません。
特に、次の点について早い段階から整理しておく必要があります。
- 導入する設備の具体的な内容・仕様・金額
- ゼロエミッション船等の将来的な市場・需要予測
- 設備導入後の生産能力・建造能力
- 売上・収益等を含む事業計画
- CO2削減効果及びその算定根拠
- 補助金がなければ投資判断が困難である理由
- 会社全体のカーボンニュートラル戦略
- 経営層がどのように事業へ関与するのか
- 資金調達方法
- 事業実施スケジュール
設備メーカー・技術担当者・経営担当者・財務担当者など、社内外の関係者から必要な情報を集めながら、申請内容を一つの事業計画として整理することが重要になります。
補助金申請をご検討の事業者様へ
ゼロエミッション船等の建造促進事業は、設備投資額が大きく、申請書においても事業戦略、収支計画、CO2削減効果、投資の必要性、産業競争力強化への貢献など、多岐にわたる内容の整理が必要となる補助金です。
ミセイ行政書士事務所では、補助金の公募要領・要件を確認したうえで、事業内容の整理、事業計画書等の申請書類作成についてご相談を承っております。
また、当事務所は行政書士・海事代理士として、船舶・海事分野に関する制度についても情報提供を行っております。
「自社の設備投資が対象になるのか確認したい」「申請に必要な資料を整理したい」「事業計画書の作成について相談したい」といった場合は、お気軽にお問い合わせください。
ミセイ行政書士事務所
補助金申請・事業計画書作成に関するご相談を承っております。
電話:097-585-5222
公式情報
最新の公募内容、申請様式、申請方法等については、必ず公式サイト及び最新の公募要領をご確認ください。
ゼロエミッション船等の建造促進事業 二次公募 公式サイト
https://pczes06.jstra.jp/concept/
ゼロエミッション船等の建造促進事業 公式サイト
https://pczes.jstra.jp/
目次
- ゼロエミッション船等の建造促進事業とは
- 補助対象となる主な設備
- 補助対象となる事業者
- 主な補助要件
- 補助率・補助上限額
- 主な補助対象経費
- 補助対象外となる主な経費
- 二次公募の申請期間
- 申請方法
- 主な申請書類
- 審査で重視されるポイント
- 事業実施期間
- 交付決定前の発注には注意|事前着手制度もあります
- リース会社を利用する場合
- 申請を検討する際のポイント
- 補助金申請をご検討の事業者様へ
- 公式情報

